グリーンケミストリー:
合成ガスからエチレンを

プラスチックはその汎用性により、人間の生活に変革をもたらしました。ゴミ袋、ペットボトル、パイプなど、数多くのプラスチック製品は、基礎化学物質であるエチレンなしには成り立ちません。そのため、これからのエチレン生産は、可能な限り気候問題に配慮した方法で行うことが重要です。ヘレウスは持続可能なエチレン生産技術の開発を行う研究プロジェクトのパートナーです。これは、化石原料を使わず、CO2排出量を大幅に減らすことを可能にする技術です。

エチレンガスはエテンガスとも呼ばれ、化学業界に欠かすことのできない基礎化学物質です。とりわけ、フィルムや包装などに広く使用されているプラスチックであるポリエチレンの出発原料として重要です。今日に至るまで、エチレンはほぼ例外なく原油およびその他化石原料から生産されてきました。まずスチームクラッキング法と呼ばれる方法で、原油を熱で分解します。そして次の段階でエチレンを分離します。このプロセスには多くのエネルギーを要し、エチレン1トンの生産につき、約1.12トンのCO2が排出されます。

Previous production of ethene.

ヘレウスが参加している研究プロジェクトは、持続可能なエチレン生産、そしてそれによるCO2排出量の大幅削減を目的としています。「目標は、革新的で気候問題に配慮し、なおかつ工業用途に適したエチレン生産プロセスを実現することです」と説明するのは、ヘレウス・プレシャスメタルズのイノベーションケミカルズ責任者であるヘンドリック・スポッド博士。ヘレウス・プレシャスメタルズはこの新プロセスに用いられる触媒を提供しています。ドイツ連邦教育科学研究技術省が資金提供するSynGas2Etheneプロジェクトは、ルール大学ボーフムが主導しており、エネルギー会社のRWEやRubokat GmbHもプロジェクトパートナーとして参加しています。

このプロジェクトでは、エチレンを石油ではなく二酸化炭素と水素から直接生産することを目指しています。合成ガス、すなわち再生可能な炭素源の生産に、バイオマスのような工業/生体残留物のみを使用します。この化学製品は使用寿命が尽きれば出発原料として再利用することもできます。それにより、化石原料に基づく従来の直線的プロセスとは対照的に、持続可能な炭素化合物生産サイクルが可能になります。

私たちの貢献:貴金属触媒

革新的なエチレン生産プロセスにおける重要なステップは、触媒作用です。ヘレウスはこれに必要なルテニウム触媒を提供しています。「最初の実験で、ルテニウムは合成ガスの触媒変換に特に適していることがわかりました。使用寿命が尽きれば、触媒すなわちルテニウムは再利用でき、この点で完全なサイクルを実現できます。」と、スポッドは説明します。このプロジェクトでは、工業的に成熟した触媒の開発を行います。「基礎研究の一部を担うことで、化学業界のCO2排出量削減に確かな貢献ができることを誇りに思っています」

エチレンの生産量は、年間約1億5000万メートルトンにも及ぶため、この分野の可能性は計り知れません。現行のプロセスでは、エチレン1メートルトン当たり約1.12メートルトンのCO2が排出されます。プロジェクトパートナーは、現在研究している新技術により、エチレン生産による温室効果ガス排出量を最大60%削減できると推定しています。

Sustainable ethene production from synthesis gas on an industrial scale.