独ヘレウス社、2021年貴金属予測を発表

ドイツ・ハーナウ
令和3年1月28日

  • 金はコロナ危機で最高記録を維持
  • 銀は引き続き上昇傾向が続く見込み
  • イリジウムとロジウムは史上最高値に達する可能性あり
  • ボラティリティの高さから価格ヘッジモデルの需要が高まる

世界最大手の貴金属精錬加工会社であるヘレウスプレシャスメタルズによると、金価格は2021年に記録的な高値を更新すると見られています。ヘレウスプレシャスメタルズ社社長のアンドレ・クリストルは、年次貴金属予測発表会において、「依然として続くコロナ禍と中央銀行の金融緩和を考慮すると、貴金属相場での最近の価格変動が続くと予想しています」と述べています。銀は強い産業需要と投資家からの継続的な関心の恩恵を受け、金よりもさらに良いパフォーマンスとなるでしょう。自動車産業への依存度が高い白金族金属は激しい変動が続き、高値で推移する可能性が高いと思われます。イリジウムやロジウムなど一部の金属は新高値を更新する可能性が高いでしょう。

ヘレウスによる貴金属取引価格予測の概要:

貴金属 1トロイオンスあたりの価格変動幅
1760 ~ 2120 ドル
21 ~ 36 ドル
プラチナ 850 ~ 1200 ドル
パラジウム 1900 ~ 2900 ドル
ロジウム 15000 ~ 25000 ドル
ルテニウム 250 ~ 500 ドル
イリジウム  2000 ~ 5000 ドル

金の見通しを見ると、ヘレウスで長年貴金属取引の責任者を務めるハンス・ギュンター・リッターは、都市封鎖(ロックダウン)が解除されれば、主要消費国であるインドと中国の宝飾品需要が回復すると予想しています。リッターはまた、国債利回りが低いあるいはマイナスになっていることや、前例のない財政・金融刺激策が実施されていることを踏まえ、貴金属に高い信頼感を持っています。「金価格は、過去の最高値である2072.50ドルを上回る可能性が高い」とも述べています。 数十億ドル規模の世界的な経済刺激策は、中期的には インフレに影響を与える可能性があり、典型的なインフレヘッジとしての金は、さらにその恩恵を受けるはずです。ヘレウスは、金1トロイオンスあたりの価格は1760から2120ドルの範囲になるであろうと予想しています。

グリーン経済への移行が銀の需要を支える

太陽電池産業の需要の高まりは銀を牽引すると見られています。地球温暖化対策のために、アメリカ合衆国ジョー・バイデン新大統領は、この技術の大幅な適用拡大を期待しています。銀が太陽電池モジュールに使われているので、結果的には需要を押し上げるでしょう。リッターは、「グリーン経済への移行により、銀の需要が長期にわたり増加すると考えられます」と述べています。また、中国での5Gネットワークの展開が加速しており、それが価格を押し上げる可能性があります。ヘレウスは、銀の価格は1トロイオンスあたり21から36ドルの範囲になるであろうと予測しています。

主にディーゼル自動車の排気ガス用触媒に用いられるプラチナについては、ヘレウスは、需要を上回る供給量の増加に伴い余剰が増加すると予測しています。リッターは、「しかし長期的には、つまり2025年頃からは、水素経済が プラチナの重要な需要家となる可能性があります」と述べています。その時点では、南アフリカの鉱山の枯渇も供給を逼迫させ、市場は供給不足に転じる可能性もあります。ヘレウスは、プラチナの価格は1トロイオンスあたり850から1200ドルの範囲になるであろうと予測しています。

中国での需要がパラジウムを支える

パラジウムは2021年も依然として不足するでしょう。しかし、一次供給と二次供給の両方が新型コロナウィルス関連で生じている混乱から回復するにつれて、その差は縮小するでしょう。専門家は、自動車業界での需要回復よりも、パラジウムの供給回復の方が上回ると予想しています。パラジウムの需要は主に自動車業界からのものであり、80%も占めています。パラジウムはガソリンエンジンの排ガス用触媒に使用されています。世界最大の自動車市場となった中国が追い風の主要因です。中国では排ガス規制がさらに厳しくなっているため、白金族金属(PGM)の使用量が増加すると見られています。その一方で、化学業界の需要は減少すると見られています。ヘレウスは、パラジウムの価格は1トロイオンスあたり1900から2900ドルの範囲になるであろうと予測しています。

ヘレウスの予測では、最近記録的な水準まで上昇したロジウムの価格は、高水準で大幅に変動する可能性が高いでしょう。クリストルは、「ボラティリティが高い状態が続いているため、貴金属の専門家による熟練したヘッジがますます重要な役割を果たすようになってきています。ロジウムの需要はここ数年で増加しています」と述べています。市場でのロジウム不足は今年さらに拡大するでしょう。最大の顧客である自動車業界での需要は、排ガス規制が強化されているため、依然として高い水準を維持するでしょう。ここにおいてもまた、中国の自動車市場は、コロナの影響による回復が他の地域よりも早いように思われるため、何よりも支えになるでしょう。ヘレウスは、主に南アフリカで採掘されるロジウムの価格が15000から25000ドルの範囲になるであろうと予測しています。

イリジウムは、直近の急騰後、2000から5000ドルの範囲になるであろうと予測されています。需要よりも供給の回復の方が強いため、今年の市場は 若干の余剰があると予想されています。ヘレウスによると、世界のイリジウム供給量の80%を供給している南アフリカの産出量は、今年は平年並みの水準になるでしょう。

長期的には、水素経済によってますます需要が増えると予測されています。 ヘレウスプレシャスメタルズが提供するイリジウムリサイクルの増加と貴金属使用量を低減した触媒技術が供給を支えます。主にエレクトロニクス産業で使用 されるルテニウムは、イリジウムとロジウムの価格上昇に追随していません。これは2021年に変わる可能性があります。ヘレウスは、ルテニウムの価格は250 から500ドルの範囲になるであろうと予測しています。

今回のヘレウスによるレポートについて日本法人へレウス株式会社 代表取締役社長 山内秀人は、「貴金属価格の大幅な変動や供給の逼迫は産業界にとって頭の痛い問題です。ヘレウスは、リサイクルサービスや貴金属使用量を低減する技術の提供に加え、貴金属の取引や管理の最適化を支援することで、市場の要求に応えていきます」と述べています。