本製品によって、ヘレウスはグリーン水素の工業規模での製造における一つのマイルストーンを達成しました。手頃な価格のグリーン水素は、EU委員会の水素と気候変動目標の重要な礎となっています。
グリーン水素への画期的な触媒:ヘレウス、新しい電極触媒の国内発売を開始
ヘレウス(以下、当社。東京都文京区大塚2-9-3、代表取締役社長 山内 秀人)は、令和3年3月1日より日本国内において、ドイツ本社で先行販売しているPEM(プロトン交換膜、Proton Exchange Membraneの略)電解用の新しい触媒(以下、本製品)の発売を日本国内でも開始したことをお知らせいたします。本製品は、イリジウム含有率が従来品よりも50〜90%少なく、最大3倍の触媒性能を有した非常に費用対効果の高い効率的なものです。触媒コストが最大43%削減され、高額とされているグリーン水素が入手しやすくなります。これは、持続可能エネルギーへの転換を成功させるための重要なステップになると期待しています。

開発元のヘレウスプレシャスメタルズ、水素システム責任者であるクリスティアン・ゲバウアーは、「グリーン水素は未来のエネルギーキャリア(運び手)です。安価に製造できるほど、成功の可能性が高くなります。イリジウムの世界的な供給は、従来の触媒でEU委員会の水素目標を達成するのに十分ではありません。したがって、製品開発を通じてこのような低イリジウム含有量を達成できたことを非常に誇りに思っています」と述べています。

世界のイリジウム供給量は年間約8トンです。PEM電解槽は、1kWの電解容量あたり約1〜2グラムのイリジウムを使用します。EUは2030年までに再生可能水素の電解槽能力を40GWとする目標を掲げており、20〜40トンのイリジウムが必要になります(20GWのPEM電解とした場合)。したがって、イリジウムを今日のニーズの10分の1にまで大幅に削減する必要があります。本製品は、このような目標を達成することができ、資源不足問題に対する持続可能なソリューションとなります。
水素はヨーロッパでの気候戦略の要
貴金属を含む電気触媒は、PEMの電気分解に使用されます。このプロセスでは、水は電気エネルギーを介して分解され、PEMにより生成された水素は工業用、燃料電池に活用されます。PEM電解槽は、風力や水力発電などの余剰電力の活用と組み合わせて使用することに適しています。

2050年までにクライメット・ニュートラル(CO2排出実質ゼロ)を達成するために、欧州委員会は2020年4月に欧州水素戦略を発表しました。この戦略では、2024年までにEUに少なくとも6 GWの再生可能な水素電解槽を設置し、最大100万トンの再生可能水素を生産することを目標としています。さらに、2030年までに少なくとも40GWの再生可能水素電解槽をEUに設置し、EUで最大1,000万トンの再生可能水素を生産するという戦略目標を掲げました。つまり、同年までに水素を統合的なエネルギーシステムにおいて不可欠なものにする必要があります。専門家は、この電解能力が将来的にアルカリ電解とPEM電解によって均等な割合で供給されると予想しています。
日本での販売開始を受け、ヘレウス株式会社 代表取締役社長 山内秀人は、「ドイツでは、EUの戦略と連動した国家水素戦略が2020年6月に策定されました。この国家水素戦略の特徴の一つは、再生可能水素、つまり再エネによって作られたグリーン水素を重視しているということです。その鍵になるのが水電解による水素製造です。ところが、PEM電解槽には高価で希少な貴金属触媒を大量に必要とするという課題がありました。今回我々が開発した触媒はイリジウム含有量が劇的に少なく、且つ既存の触媒と同等以上の性能を有しています。本触媒を日本企業に提供することで、日本の水素戦略にも貢献していきたいと考えています。」とコメントしています。