自動車の生産に用いられる最新の赤外線加熱

  • 赤外線ヒーターは短時間に大量の輻射エネルギーを照射できます。
  • 赤外線加熱は非接触で対象物に的確に加熱します。
  • 最新の中波長赤外線ヒーターが、ブレーキパッドの防錆コートの硬化に用いられています。
  • エクセリタスノーブルライトの赤外線ヒーターは自動車業界で何十年にもわたり使用されています。

赤外線の光エネルギーは、自動車および自動車部品の製造に広く使用されている熱源です。自動車産業で初めて使われ始めたのは1950年代で、それ以来赤外線技術は大きな進歩を遂げてきました。例えば、最新の赤外線システムを設置することで、生産のボトルネックを解消し、生産速度をアップし、コストを低減することができます。これは、英国企業により、ブレーキパッドの粉体塗装硬化において、4倍の生産量を達成できることが実証されています。

最新の自動車生産における赤外線加熱

ブレーキシステムは、あらゆる自動車において非常に重要な部分です。英国のフェデラル・モーグル社は、世界中で自動車用ブレーキシステム部品を製造しています。同社のブレーキパッドには黒色の防錆コーティングが施されており、ブレーキパッドを作動中のスプレー水による損傷から保護します。同社では、元々、この黒色エポキシコーティングが製造ラインで塗布された後の硬化用として中波長赤外線ヒーターを使用してきました。しかし、需要増に伴い、従来の乾燥工程では生産が追いつかず、競争力を維持するためにボトルネックを解消しなければなりませんでした。

加熱/硬化プロセスにはさまざまな制限がありました。1つには、照射エリアはブレーキパッド全体ではなく、表面でのみでした。また、生産スペースに限りがあったため、新しい加熱システムは既存のスペースに収めなければなりませんでした。中波長赤外線は、エポキシコーティングの溶融と硬化に理想的であったため、応答性の早いタイプの中波長ヒーターを搭載した赤外線加熱システムを選択しました。このタイプのヒーターは、有効な中波長赤外線を放射する一方で、プロセスの速度アップに必要な電力を供給します。しかしこれ以上に、従来の中波長赤外線ヒーターの立ち上がり、立下りにかかる時間が数分であったのに対し、このヒーターはたった数秒という応答性がありました。選択した最新ヒーターの応答速度はまた、制御のし易さも意味しています。つまり、一連のブレーキパッドに合うように乾燥炉内の温度プロファイルを得ることが可能であることを意味します。

新しい162kWの赤外線システムには30本の応答性の早い赤外線ヒーターが装備されています。最初に、粉末を融点にし、次に確実に硬化させるために正しい温度でコーティングされた製品を維持します。最新の赤外線システムを設置したことで、一連のブレーキパッドの粉体塗装乾燥の量を4倍にしました。

さて、赤外線加熱が自動車産業で初めて用いられ始めたのは1950年代で、赤外線加熱は車体の乾燥において革新的と考えられていました。この当時の赤外線ヒーターは遠赤~中波で金属管、セラミック、不透明石英ガラスでできており、動きが遅いものでした。石英ガラス製初の赤外線ヒーターは不透明な管から成り、外部反射板が取り付けられていました。応答は非常に遅く、特に強力というわけではありませんが、非接触での動作により、以前使用されていた熱風炉に比べて大きな利点がありました。

自動車の近代化に伴い、プラスチック部品および電子機器がますます普及するようになりました。これは、プラスチック部品や電子機器は熱風に長時間耐えることができないため、加熱プロセスをより正確に行う必要性がでてきました。80℃で長い滞留時間を許容できる加熱プロセスはほとんどなく、必要とされる時に必要な個所に加熱する傾向へと変化してきています。

生産速度の一層の高速化と低コスト化への圧力により、より効率的な熱源の開発がさらに推進されました。

自動車向け赤外線加熱技術

今日では、すべての有名な自動車メーカーは赤外線システムを設置していると言われています。いまだにボディワーク、予備乾燥、仕上げラッカーの乾燥、補修乾燥にも使用されています。さらに、赤外線で処理される部品がますます増えています。ガソリンタンク、ポンプ、ギア、オイルサンプ、または前述のブレーキパッドなど、自動車部品には硬化または乾燥を要するコーティングまたは保護ラッカーの工程があります。自動車に使用されるプラスチックの加熱方法もあります。例えば、射出成形されたプラスチック部品は、加熱することによってバリを除去することができ、プラスチック部品が後でコーティングされるか、またはラッカー塗装される場合、品質を向上させる工程になります。

このように、赤外線加熱技術は1950年代から大きな進歩を遂げました。設計上の安定性と、加熱対象物の表面により多くの赤外線を伝達する能力があるため、石英ガラス製赤外線ヒーターは現在ツインチューブとして使用されています。現代の反射板は外付けではなくなり、ヒーター管内部に施されており、汚れることはありません。金反射膜によって、赤外線の約95%が製品に照射されます。これは、コーティングがより早く透過し、加熱システム自体が加熱されないことを意味します。

赤外線加熱技術の初期には、ヒーターは比較的低出力でした。今日では、必要に応じて最大1000 kW/m2のエネルギー密度を伝達します。このような高いエネルギー密度は、コイルコーティングなどの用途に必要です。自動車業界のほとんどのアプリケーションでは、約100 kW/m2のエネルギー密度で十分です。通常、20~30 kW/m2のエネルギー密度があればほとんどのコーティングには十分で、迅速で経済的な乾燥が可能です。

最新の赤外線システムはコンパクトで、既存炉に容易に取り付けることができ、または既存炉を補完することができます。例えば、プラスチックバンパーのコーティング用として、熱風炉の前に設置できる赤外線システムがあります。赤外線で予備乾燥することで、乾燥プロセスの速度アップが可能になります。

複雑形状の部品の場合は、熱風炉と赤外線システムを組み合わせることが有効です。赤外線が直接対象物を加熱させる一方で、熱風が影となっている部分などの隅々まで乾燥をさせていきます。

最新の赤外線ヒーターは、波長、出力、ヒーター形状の点でお客様の製品とプロセスに完全に合わせることができます。すべての場合において、熱源をプロセスおよび材料に正確に合わせることは価値があります。これにより、生産速度が向上するだけでなく、品質や不良率が向上し、コストの低減につながります。