UV LED硬化の採用:産業印刷の動向と利点

ヘレウス・ノーブルライト
ドーン・スキナー著

はじめに

技術と市場の動向として、産業印刷の生産マネージャーは、製品の識別と加飾工程を改善するために、UV LEDインクジェット印刷を検討するよう促されています。デジタルインクジェット印刷とUV LED硬化の組み合わせは、さまざまな製造工場や既存の社内印刷において多くの利点があります。多くの生産マネージャーは、既存のラインに後付けするだけで、投資利益を迅速に回収できます。本稿では、産業印刷にUV LEDデジタルインクジェットを使用する利点と共に、その採用を促進する技術と市場動向について説明します。

仕上げの部品や製品の製造に使用される産業印刷は、一般的に、自動車の内装部品から医薬品の包装、販促品、家電製品に至るまで、多くの製品に使用されています。これらの印刷の多くは、UPCバーコード、シリアル番号などの必要な識別データの簡単なマーキングやコーディングで、すでにサーマルインクジェットを使用しているか、UV LEDインクサプライヤによって提供されることが多いUV LEDデジタルインクジェット印刷機に更新されています。

さらに興味深いこと、および本稿の焦点となるのは、より複雑な識別や加飾さえも印刷箇所に直接印刷する産業印刷工程であり、これは現在インクジェット印刷プロセスを用いていない、または、従来のUV硬化によるインクジェット印刷を行っているということです。 例えば、パッド印刷またはシルクスクリーン印刷で部品を加飾またはマーキングするメーカーは、現在、UV LEDインクジェット印刷の最初の候補となります。同様に、既に製造部品に従来のUV硬化でインクジェット印刷を使用している場合も、UV LED硬化への更新を評価する必要があります。

技術と市場動向

まず、主要な技術と市場のトレンドを理解することから始めましょう。技術面では、デジタルインクジェットプリントヘッドとUV LED硬化技術の進歩により、UV LEDインクジェット印刷を既存の産業印刷機に後付けすることが経済的になります。

デジタルインクジェット技術の進歩

デジタルインクジェット印刷は、可変データを簡単に印刷でき、印刷品質がほぼまたは同等で、セットアップ時間がほとんどかからないという特有の利点により、多くの従来のアナログ印刷プロセス(ワイドフォーマット、フレキソ印刷、その他のグラフィックアート印刷)にすでに広く根付いています。ドロップ・オン・デマンド方式、デジタルオンデマンド、プリントヘッド、特にピエゾグレースケールプリントヘッドは、マイクロスケールで毎秒数百万滴を正確に印刷し、より安価に高品質に印刷できます(より少ないプリントヘッドで高速印刷)。パッド印刷やスクリーン印刷などのほとんどの産業印刷では、すでにシングルパスの固定印刷が使用されているため、生産ラインと同じスペースに、シングルパスインクジェットプリントヘッドを簡単に後付けできます。

UV LED硬化の進歩

照射面におけるUV LEDのピーク照度

商業用途に用いられているUV LED硬化は、2000年半ばから急速に進歩しています。空冷式システムのUVエネルギー出力またはW/cm2あたりのピーク照度は、2008年から2014年にかけて約1.5から11 W/cm2に増加しました。今日では、ピーク照度が12から14 W/cm2の空冷式UV LED硬化装置が一般的で、16W/cm2もあります。これらの進歩は、歴史的に急速な進歩を遂げている UV LEDチップテクノロジーによるもので、9〜12か月ごとに効率が10〜20%向上しています。

エンドユーザーにとってさらに重要なことは、UV LED装置メーカーが、冷却技術と光学系を大幅に進歩させたことにより、LEDチップアレイのより緻密なパッケージングと大幅に改善された光学系が可能になり、基板へ到達するUVエネルギーが向上したということです。これによって、産業用インクジェット印刷などの高速印刷プロセスが可能になりました。今日、UVインクジェット用インクのフォーミュレーターは、プラスチックや金属などの産業印刷アプリケーションで一般的に使用されるさまざまな非吸収基材のUV LED硬化インクを開発しています。

カスタマイズと柔軟性は市場のトップトレンド

産業印刷機に影響を与える市場のトップトレンドは次の通りです:

  • 安価なショートラン印刷への高まる要求
  • カスタマイズへの簡単な対応
  • さまざまな部品サイズと基材に印刷できる柔軟性

大量のカスタマイズは引き続きトレンドであり、産業印刷機では、ロゴ、日付、言語、カスタムアートなどのカスタムデザインを少量の製品に印刷できる必要があります。このような少量生産では、より長いセットアップ時間が必要なパッド印刷やスクリーン印刷などの従来の産業印刷プロセスは、デジタルインクジェットに比べて、経済的でもなく高速でもありません。

多くの産業印刷では、サイズや基材が異なる可能性のある各種部品に印刷する、という柔軟性が必要になります。例えば、医療機器の工場では、同じ印刷を、機器の異なるサイズや多種のプラスチックに使用されます。自動車サプライヤーでは、各自動車OEMの顧客や車種に特定の内装部品を印刷することがあります。インクジェットプリンターでは、インクは特定の基材用に配合され、UVインクは通常、さまざまな材料に優れた密着性があります。

また、インクが製品に噴射されるため、プリントヘッドが、ガラスのような壊れやすい基材に損傷を与えることはなく、異なる印刷領域と各部品サイズに対応するように設定することができます。

UV LEDインクジェットを採用する利点

UV LEDインクジェットには、産業印刷をするうえで多くの利点があります。最大の利点は、カスタマイズされた少量の製品を、パッド印刷またはスクリーン印刷よりも低コストで迅速に提供できることです。通常、UV LEDでのインクジェット印刷は、プロセスが一貫しているため、完成品の印刷不良によるスクラップ率が大幅に低下し、無駄が少なくなります。これはコスト削減に大きな影響を及ぼします。また、産業印刷機は、熱に弱い部品や壊れやすい部品に損傷を与えることなく、幅広い種類の基材への印刷も柔軟に対応します。

従来のUV硬化に対する UV LEDの利点

産業印刷向けUV LEDインクジェットの利点:

  • ショートラン印刷の低コスト化
  • より速いターンアラウンド
  • スクラップ率の低下
  • カスタマイズされた特殊製品への容易な対応
  • 柔軟性の向上

既存のUVインクジェット産業印刷機にも利点

従来のUV硬化とインクジェット印刷をすでに使用している産業印刷の場合、UV LED硬化に更新すると、運用コストとメンテナンスコストの低減、ダウンタイムの短縮、水銀やオゾンの発生がなく基材への熱ダメージが少ないため、作業環境の安全化にもつながります。例えば、ほとんどのケーブルマーキング作業では、すでに高速UVインクジェット印刷が用いられており、繊細なケーブル材料の損傷を防ぐための熱管理が懸念されています。このような操作には、UV LED硬化に簡単に更新して、熱管理をより簡単にし、運用コストを削減し、ダウンタイムを短縮できます。

エンボス効果が可能

UV LEDインクジェット印刷では、100〜150ミクロンの塗布厚のインクを印刷して、基材にエンボス効果を造り出すことができます。そのため、スクリーン印刷で点字を印刷する場合や、セラミックやガラスに加飾する産業印刷の場合でも、UV LEDインクジェットの利点を得られます。例えば、現在では医薬品には点字印刷をする必要があり、一部のメーカーでは、スクリーン印刷よりも速い生産速度で一貫した印刷品質を得られるため、 UV LEDインクジェット印刷で行っています。

UV LED硬化型インクは、すべての用途に理想的ではありませんが、その優れた密着性がほとんどの産業印刷用途の重要な機能要件となっているため、多くの産業印刷用途には最適です。また、わずかに黄変しがちなUV LED硬化型インクでは、鮮やかな白が依然として課題ですが、ほとんどの産業印刷用途では十分な品質とされています。

UV LED硬化型インクでは課題となる、優れた耐傷付性や耐擦傷性を必要とする産業印刷用途では、何らかの二次硬化メカニズムを併用した UV LED 硬化型ハイブリッドインクを使用すると、ピニングが可能になり、印刷品質を損なうことなく生産速度を上げることができます。

産業用印刷メーカーは、既存のパッド印刷またはスクリーン印刷ラインを、デジタルインクジェットプリントヘッドとUV LED硬化装置に改造することを評価する必要があります。これにより、柔軟性が増し、少量印刷する際の印刷所要時間が早くなり、高い投資利益率につながる運用コストを低減することができます。