ヘレウスの新しいコーティングで、高温合金の耐用年数を最大8倍に延長可能に

2021年9月21日、ドイツ・ハーナウ

ヘレウスの新しいコーティングで、高温合金の耐用年数が最大8倍に延長可能に

ヘレウスの特許取得済みコーティングプロセスは、炉や化学プラント用の高温合金の耐用年数を延ばします。

ヘレウス・ハイパフォーマンスコーティングスの責任者、イルカ・ラック博士は、「私たちの研究結果は非常に有望です。コーティングは、あらゆる微細構造の変化、ボイドや析出を防止します。その結果、合金の腐食が大幅に抑制され、耐用年数は最大で8倍にもなります。」と述べています。

高温合金の最大の課題の1つは、その耐用年数が腐食によって制限されることです。メンテナンスのためのダウンタイムとは別に、腐食はフレーキングを引き起こし、生産中の製品を汚染します。ここで役立つのが、ヘレウスの革新的プロセスです。エアロゾルデポジションにより、合金は⍺-Al2O3の層で保護されます。用途としては、例えば金属基材製造や電池材料の製造に使用される焼成炉や乾燥炉が考えられます。これらの産業では、純度の高さが重要です。そのため、不純物の混入を防ぐことは、スクラップの削減と生産性の向上を意味します。

高温合金の腐食の仕組み

高温合金は、高温でのクリープ強度と機械的抵抗が高いという特徴があります。そのため、温度範囲が400℃~1400℃の多くの用途で使用されます。

合金が少なくとも0.5%のアルミニウムを含む場合、表面にAl2O3層を形成することによって自身を保護する限定的な能力があります。しかし、1000℃以下の温度では、θ-Al2O3やɣ-Al2O3などの準安定相が形成され、温度が上下して体積が変化すると、相転移が起こります。このような相転移はボイドを発生させ、腐食を引き起こします。また、Al2O3層の形成に必要なアルミニウムは急速に消費され、枯渇し、特性が低下します。

研究によって証明された保護効果

ヘレウスが行ったこの研究は、アルミニウム含有量が1.8~2.4%のMCrAlY合金であるアロイ602(NiCr25FeAlY)を使って行われました。エアロゾルデポジションにより室温でサンプルに5 μm厚の⍺-Al2O3層でコーティングを施し、実際の用途での温度を模して1000℃で50時間の熱処理を行いました。コーティングされたサンプルは走査型顕微鏡で観察した断面において微細構造の変化を示さず、これはコーティング処理を行っていないサンプルとは対照的な結果となりました。

これらの結果は、アルミニウム含有量が0.5%以上のすべてのニッケル合金に適用できます。イルカ・ラック博士は、「もちろん現在、現実的な条件下で追加の長期試験を実施しており、⍺-Al2O3コーティングの有効性をさらに証明するために他の合金を使用した試験も行っています。」と述べています。