ニッケル・リンとダイヤモンドをコルゲーションとセラミックに置き換えることでフリクションシムの適用温度が2倍に

2022年8月9日 ドイツ・ハーナウ

エアロゾルデポジション法を使用することで、セラミックコーティングを経済的に作り出すことができます。これにより初めて、ニッケル・リンを含まないフリクションシムの適用温度を700℃まで高めることが可能になりました。

エアロゾルデポジション

フリクションシムは、部品を大規模に設計することなく高トルクを伝達しなければならない用途において必要とされます。既存のフリクションシムは、ニッケル・リンでコーティングされ、その中にダイヤモンドが埋め込まれています。これにより、ディスクの摩擦力が高まり、2つの部品がより強固に結合されます。ダイヤモンドの大きさと数は、接合する部品の表面に合わせて決められます。

しかし今後は、セラミックコーティングが従来のプロセスの代わりになります。表面自体を加工し、酸化アルミニウムなどのセラミックでコーティングすることで、必要な粗さと強度を実現します。現在のところ、この組み合わせは未処理の表面と比較して摩擦力を少なくとも6倍に高めることが確認されています。従来のコーティングに比べ、高価な原料であるダイヤモンドを節約することができ、同時に健康に害のあるニッケル・リンが必要なくなります。法規制により製造工程における労働安全に対する要求が徐々に高まっているため、このことはとくに重要です。

また、セラミックにより約2倍の動作温度が可能になります。従来のコーティングは400℃までしか使用することができず、また導電性もあるため、用途の範囲が限定されていました。セラミックコーティングでは、シムの温度限界である通常700℃まで使用することができ、電気絶縁効果もあります。

セラミックコーティングが施されたフリクションシム
従来のコーティングが施されたフリクションシム

0.5 µmからの薄いセラミックコーティング

従来のセラミックのコーティング法では、必要な数マイクロメートルの薄膜を作ることはできませんでした。そんな状況を打破したのが、エアロゾルデポジション法です。ヘレウス・ハイパフォーマンスコーティングスの責任者であるイルカ・ラック博士は、「エアロゾルデポジションは、α-Al2O3などのセラミックの薄膜コーティングを室温でコスト効率よく作り出すことができます。そのため私たちは、近年、この方法を産業用としてさらに発展させました。」と説明しています。他のセラミックコーティング法では、高温と基材の複雑な前処理が必要になります。エアロゾルデポジション法ではそのどちらも必要ありません。また、優れた密着性と密度も実現しています。これこそが、高性能なコーティングが必要となる用途に最適である理由です。

フリクションシムが性能の限界を押し上げる

フリクションシムとは、硬化処理とテクスチャード加工が施された表面を持つ非常に薄い鋼鉄の円板や箔であり、対向するより柔らかい面に押し付けて装着します。これにより、2つの部品間の接続強度が向上し、トルクの増加や同じ性能に対する部品の小型化が可能になります。そのため、高性能でありながら小型・軽量設計が一層求められている多くの用途、例えば、推進技術、風力タービン、ロボット、自動車産業などで必要とされています。

エアロゾルデポジションについて

エアロゾルデポジション法は、あらゆる種類の材料に金属やセラミックの薄いコーティングを室温で形成することを可能にします。材料粒子はキャリアガスによって秒速数百メートルの速度まで加速されます。そして、その粒子が表面(基材)に衝突し、高密度の閉塞膜が形成されます。ヘレウス・ハイパフォーマンスコーティングスは、この方法を産業規模での生産に最適化し、実現可能性調査から新しいプロセスの量産導入に至るまで、お客様をサポートしています。

従来のコーティングとセラミックコーティングの素材比較
エアロゾルデポジションの装置