UV LEDによるコンフォーマルコーティング:有電極高圧水銀ランプからUV LED硬化へのグレードアップに関する重要事項

多くの電子機器メーカー、プリント回路基板(PCB)の組立て業者、電子機器製造サービス(EMS)プロバイダーは、PCBのコンフォーマルコーティングにUV硬化を使用しています。その結果、彼らはVOC排出量を低減し、生産率を上げ、初回の品質率を向上しています。近年のUV LED硬化技術の進歩により、彼らは、コンフォーマルコーティングプロセスをさらに向上させ、競争力を高める機会を得ているのです。

UV LED硬化技術の利点と、PCBのコンフォーマルコーティングに従来の有電極高圧水銀ランプによるUV硬化を、UV LED硬化に置き換える際に考慮すべき主な要因について詳細を説明します。

コンフォーマルコーティングの有電極高圧水銀ランプによるUV硬化と比較したUV LEDの利点

従来の有電極高圧水銀ランプによるUV硬化と比較したUV LED硬化の最大の利点は次の通りです:

  • UV硬化プロセスがより安定し信頼性が高い
  • 生産率が高い
  • メンテナンス頻度の減少や、長寿命のためダウンタイムの短縮が可能
  • エネルギーコストが削減
  • VOC、オゾンを排出せず、水銀を使用しないことで環境に配慮したプロセスが可能
  • UV LEDからの熱量が少なく、熱に弱い部品に損傷を与えない
  • 省スペース化が可能
  • 瞬時のON/OFFや、硬化幅を調整できるなど、プロセスの柔軟性が向上

以下の表は、高圧水銀UVランプとUV LEDのUV硬化システムの技術特性の比較を示しています。

有電極高圧水銀ランプとUV LED
有電極高圧水銀ランプ UV LED 備考
有用寿命 500~3,000時間* 10,000時間以上 全てのUVランプは経時変化を起こすため、適切に硬化できる状態で、期待される運転時間である「有用寿命」を理解することが重要です。
*有電極ランプの寿命は、ランプが狭い動作温度範囲に保たれない場合、またON/OFFサイクルによって、著しく短縮されます。有電極ドーピングランプは、高圧水銀有電極ランプの寿命より短くなります。
冷却要件 外部ファン:
複雑で非常に重要
内蔵ファン:
シンプル
全ての型式に水冷方式が使用されます。一般的にUV-LEDシステムは、従来のUVシステムよりも冷却量が約10倍程度少なく、Semrayに採用されているような動的冷却では、寿命が長く最適な状態で作動します。
エネルギーの使用量 多い 少ない UV-LED硬化システムは、従来のUVシステムより30 ~ 70%少ないエネルギーで十分です。
ランプ出力 200~800 W/inch 8 - 22 W/cm2 これは硬化システムのクラスに関する一般的な表示ですが、基材に達するUVエネルギーを示すものではありません。有電極ランプシステムについては実際の入力電力にあたります。UV-LEDについては、一般的に照射面におけるピーク照度を示します。UV硬化システムのエネルギー密度の定格には標準はなく、ユーザーは試験を行うか、あるいは各メーカーからデータを入手する必要があります。
波長出力 広域、
短波長及び長波長、
ドーピングランプ
狭域、
ほぼ単一、
365、385、又は395nm
UV発光スペクトルと塗料の吸収スペクトル域が一致している必要があります。これは通常、塗料メーカーから入手できます。UV-LEDの長波長発光はラミネート接着剤とPSAに理想的ですが、ハードコートの表面硬化には難しい問題です。

ランプの長さ
2.794mまで、スポットキュア 特注アレイの長さ
又は複数モジュールセグメント
モジュール式UV-LED硬化システムSemrayは、UV-LED技術が進展するにつれ、様々な波長に迅速に変更することができ、アップグレードにあまり費用がかかりません。
調光 38~100%、ステップまたは連続 40~100%、連続 制御はプロセスの柔軟性と一貫性を向上するため、一般的に全体のコーティングラインと連動しています。電源技術はUV LEDシステムSemrayに見られるように、スマートで自己監視の動的制御を含むように、急速に進歩しています。
ウォームアップ時間 ~ 5分 0 UV-LEDの瞬時ON/OFF機能は、アークランプよりはるかに優位性があるため、高いライン稼働率と生産率につながります。
再起動時間 長い、シャッターの使用必須 0 生産中の予期せぬライン停止や経時変化は、UV-LEDでは起きません。シャッターが壊れる心配もありません。
水銀 使用 不使用 UV-LEDは作業環境がより安全になり、より持続可能な生産プロセスが可能になります。
オゾン 使用 不使用 短波長UVエネルギーはオゾンを発生させます。
UV-LEDは短波長を放射しないため、オゾンの発生はなく、より安全な作業環境と、より持続可能な生産プロセスが可能になります。
重量 重い 軽い UV-LEDのユニットは軽量で、架台とUVライトシールドもかなり軽くなります。
形状因子 嵩高い コンパクト UV-LEDはとてもコンパクトなため、既存ラインへの組み込みは容易で、表面硬化、つまりフィルムのハードコートといったコンバーティングアプリケーション用として、既存の有電極ランプとの併用でも使用されています。UV LEDを用いれば、大型な冷却装置、排気ダクト、外部ファンは不要です。

UV LED硬化技術は急速に進歩し、エネルギー出力は年間12%増加しています。さらに、改善された冷却系および光学系の使用により、UV LED硬化システムメーカーは、基材上の必要箇所により多くのUVエネルギーを照射できる信頼性のあるシステムを開発できます。最近、コンフォーマルコーティング用のコーティング剤メーカーは、上記のようなUV LED技術の改良をUV LED硬化型材料の開発に活かしています。

コンフォーマルコーティングプロセスを有電極高圧水銀ランプからUV LED硬化変更するときに考慮すべき重要な要因

全てのUV硬化プロセスは、フォーミュレーションの吸収スペクトルとUV硬化システムの波長出力とのマッチングが必要です。部品の寸法、取扱方法、生産速度、UV LEDシステムの機能などの追加のプロセスパラメータは、コストと投資収益率(ROI)に影響を与えます。また、リスクを最小限に抑えながら思い通りのUV LED硬化プロセスに実現するため、プロセス開発パートナーと協力も重要です。これらの各要素について詳しく説明します。

コンフォーマルコーティングのUV LED硬化型フォーミュレーション

既存のUVコンフォーマルコーティングは、100%の固形分(揮発溶剤を含まない)、一液型、不燃性で、デュアルキュア硬化技術を用いています。コーティング後、PCBはUVエネルギーを照射すると数秒で硬化します。しかし、二次的な硬化(時には熱、最も一般的には湿気)により、UVエネルギーが到達しない影の部分のコーティングを硬化します。

市販のUV硬化型フォーミュレーションは、広い波長領域スペクトルの有電極ランプやUV LED硬化システムのいずれかで使用するために設計されたものと、UV LED硬化のみで使用するために特別設計されたものが入手可能です。前者はどちらか一方の硬化技術を使用できるという柔軟性がありますが、UV LEDの単一出力波長用に特別設計されたフォーミュレーションは、UV LEDで硬化する際には、より効率が良く、生産速度がより速くなります。UV LED用のフォーミュレーションはまた、PCBをより良く保護するための、より厚膜コーティングを硬化することができます。 (参考資料:https://globalsmtseasia.com/articles_&_papers/the-evolution-of-conformal-coating/)

UV LEDの分光分布特性

二次硬化が不要な時もあります。例えば、プロセスが選択的コーティング、高粘度コーティング、または侵入する場所が少ない、小型の表面実装部品(コーティングが下に流れない)を使用する場合、UV LEDのエネルギーは、ライン下のすべての材料に到達する可能性があります。UV LED用コーティングサプライヤーは、波長を指定します。395nmは最も一般的ですが、365nm、385nm、405nmも可能で、二次硬化が必要かどうかも指定します。

通常、自動選択スプレー、手動スプレー、噴射装置、またはブラッシングなどの既存のUVコーティングに用いている方法はいずれも、UV LEDコーティングにも用いることができます。従って、プロセス面での変更はありません。

コンフォーマルコーティングサプライヤーには、UV LED硬化型樹脂をすでに上市しているサプラヤーもいます。ほとんどのコンフォーマルコーティングのフォーミュレーターは現在開発に焦点を当てた研究開発の計画があるため、将来的にはもっと多くのUV LED硬化型コンフォーマルコーティングが利用可能になるでしょう。

UV LED硬化プロセスと装置のオプション

生産速度、広いプロセスの幅、必要とされる多様性/柔軟性、搬送または静止照射、波長、高さ調整、コンベヤ速度の調整、調光能力、UVエネルギー出力、コーティング塗布ラインへの制御装置の内蔵、コンベヤかあるいは卓上フラッドシステムかなどは、UV LED硬化プロセスと装置の選択で考慮すべき点になります。

新しいコンフォーマルコーティングのUV LED硬化プロセスの要件を設計するには、まず既存のプロセスと希望する生産速度を決めなければなりません。例えば、既存のプロセスがバッチプロセスで静止照射である場合、希望する生産速度を達成するには、フラットラインコンベアによる連続プロセスを要求されることがあります。あるいは、すでに連続プロセスを用いてる場合は、UVLEDは小さな形状ですので、ラインをUV LED硬化装置に改造することができるでしょう。

さまざまな製品を流すことができる柔軟性が必要な場合は、変化するプロセスのニーズに容易に適応できるUV LEDシステムを検討することが重要になります。通常、モジュール型システムは、硬化幅や異なる波長出力への迅速な切り替えなど、プロセスの柔軟性が高いです。他に検討すべきプロセスの柔軟性には、様々な光源距離で硬化可能なこと、そして調光が可能であるという点も含まれます。

さらに、初期コストだけでなく、UV LEDシステムの総所有コストも評価する必要があります。有電極高圧水銀ランプシステムと比較して、UV LEDシステムはメンテナンス頻度が非常に低く、エネルギー使用量とスペアパーツの必要量も少ないです。従って、運転コストが少なく、ダウンタイムも短くなります。しかし、急速に進歩している最新のUV LEDチップ技術を利用するためのアップグレードは、コストがかかる可能性があり、また、プロセスのニーズは、新しい顧客の要求を満たすために変わる可能性があります。カスタムUV LED硬化システムまたは特定幅用のシステムでは、まったく新しい硬化ユニットを購入する必要があるため、コストとダウンタイムの両面で最新のUV LEDチップ技術へのアップグレードにコストがかかる場合があります。その他のすべて、すなわち照射面、ハウジング、冷却ファン、電源/制御、および取り付けシステムなどはそのまま維持しながら、UV LEDアレイのみを交換することが可能なシステムを探すのが良いでしょう。

低リスクで思い通りのプロセスの開発と必要条件

UV LEDによるコンフォーマルコーティングに切り替える際、プロセスの成功と投資収益率を達成するために最も重要な要素は、チームを導きサポートする最良のパートナーを見つけることです。実現への初期段階であっても、特定の状況に対してより現実的な情報を得ることができるため、樹脂とUV LED硬化システムの両方のメーカーからサポートを受けることをお勧めします。また、メーカーの評価と比較を行い、テスト、試験、および運用開始までの間、最適なメーカーとの関係を構築することができます。

プロセス開発と必要条件

ラボで照射試験を実行できる、またはパイロットテストのためより安価なUV LED硬化装置を提供でき、またはプロセスと生産率を証明するための工場内試験が可能な、コンフォーマルコーティングの経験のあるパートナーを探してください。メンテナンスサービス、電話によるサポート、スペアパーツなど、どのようなトレーニングやアフターセールスサポートが必要になるかを検討してください。自社がグローバル事業を展開している場合は、グローバルに事業を展開しているパートナーを探してください。

 UV LED硬化システムメーカーの選択 の詳細についてはこちらをご覧ください。

 UV LED硬化によるダウンタイムの短縮 についてはこちらをご覧ください。