紫外線殺菌の仕組みや効果、注意点を解説

紫外線には細菌などの微生物の細胞を不活性化する作用があり、水や空気の殺菌、食品包装材の表面殺菌など幅広い用途で活用されています。特に、近年は食品の安全性に対するニーズが高まっており、高い殺菌効果を持つ紫外線殺菌が注目されています。

本記事では、紫外線殺菌の仕組みや用途、使用する際の注意点などを解説します。

目次構成

紫外線殺菌とは

紫外線には細菌やウイルスを殺す効果があり、食品の衛生管理や医療分野などで広く利用されています。本章では、紫外線殺菌の仕組みや注目されている背景を解説します。

紫外線殺菌の仕組み

紫外線(UV)にはさまざまな波長があり、波長の長さによってUV-A、UV-B、UV-Cの3種類があります。紫外線殺菌は、UV-Cの紫外線を対象物に照射することで、対象のDNAの鎖を変化させ増殖を防ぐ手法です。

紫外線殺菌に有効な波長は200nmから300nmであり、280nm未満の短い波長域である紫外線UV-Cには高い殺菌効果があります。細胞内のDNAには260nmの波長付近に光の吸収帯があり、DNAが紫外線を吸収することでDNA構造が破壊されます。これにより、生きている細胞は不活性の状態となり、増殖ができなくなります。

なお、UV‐Cは自然界ではオゾン層で吸収され地表までほとんど届かないため、生物は生きていくことができます。

紫外線殺菌が注目されている背景

紫外線殺菌は、食品衛生に関する分野で特に注目されています。

その背景として、昨今、食の安心・安全意識の高まりにより食品衛生の必要性が増しており、高度な殺菌レベルが求められていることが挙げられます。

食品の衛生を保つためには、食品が腐ったりカビが生えたりしないように食品の保存性を高める必要があり、そのためには無菌の環境において殺菌した食品を無菌化した包装材料で包装することが重要です。

「熱殺菌」は実績の高い手法ですが、熱を掛けられない食包材などに対応できません。そこで、低温で高い殺菌効果が期待できる「紫外線殺菌」などが注目されているのです

紫外線殺菌の効果

前述のように、UV-Cには高い殺菌効果があり、ウイルス、細菌、酵母菌、真菌などの微生物は照射により数秒で死滅します

ウイルスやカビ、バクテリアなどは空気中に存在しており、病院や空港など人が頻繁に出入りする場所や、工場など産業の現場にも存在します。空気中に浮遊しているこれらの微生物は人の健康に悪影響を与えたり、食品を腐らせたりしますが、紫外線殺菌を行うことでその多くを死滅(不活性化)させ、衛生状態や保存状態を改善できます

紫外線殺菌の用途

紫外線殺菌は、下記のように水や空気の殺菌、食品パッケージの表面処理などさまざまな用途で活用されています。

水処理

紫外線による水の処理は、長年産業界で行われています。具体的には、以下の用途があります。

  • 上下水処理場での水の殺菌
  • 食品や飲料の製造工程における洗浄などのプロセスでの水処理
  • 製薬、半導体、その他の製造用の超純水の製造
  • バラスト水(船舶が船体の安定性を保つために重しとして積み込む水)の処理

空気の殺菌と排気処理

紫外線殺菌は、空気の殺菌、臭気の除去、空気中の汚染物質の減少に役立ち、工業の現場や日常生活の場面で広く利用されています。具体的な用途は以下の通りです。

  • タンク、サイロ、その他のコンテナ内の空気浄化
  • 厨房での排気中の油脂(グリス)とその臭気の低減
  • 産業排気中のエアロゾル、有機汚染物質、VOC(揮発性有機化合物)の削減や臭気の分解
  • クリーンルームや製造現場での空気殺菌
  • 人の出入りが多い建物における空気殺菌

食品パッケージの表面処理

細菌や真菌などの有害な微生物は、食品包装の過程で完全に除去しなければなりません。UV-Cによる殺菌は、化学薬品を使用せずに微生物などをLog3のレベル(99.9%)で死滅できるため、食品衛生の現場で重宝されています。

食品パッケージ表面の紫外線殺菌を徹底することで、保存期間を延長し、フードロスを減らすことができます。

なお、今後は賞味期限の延長や食中毒への対策といった食品の安全意識の高まりや、欧州の殺菌レベルの向上により、紫外線殺菌に対してもLog4(99.99%)以上の殺菌レベルが求められることが想定されます。

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紫外線殺菌を行う際の注意点

紫外線殺菌を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

人体に照射しない

紫外線殺菌は細胞のDNAを損傷させて殺菌する手法であるため、使用時は人体に当たらないように注意しなければなりません。特に、UV-Cは本来地表に届かない有害な紫外線であり、当たってしまうと目の炎症やひどい日焼けの症状が出ます。障害が残ってしまう恐れもあるため細心の注意が必要です。

対象物以外の物に照射しない

紫外線が物に当たるとさまざまな化学的作用を起こし、劣化を招きます。身近な例では、衣類の染料の分子が分解されることで変色(退色)が起こるなどがあります。人体にも影響があるため、対象物以外の物に紫外線が当たらないよう細心の注意が必要です

殺菌できる範囲に注意する

紫外線は、物質表面などの光が当たる場所にのみ照射可能であるため、材質や形状によっては当たらない箇所が出てきます。また、斜めから当てるとエネルギーが弱まり、期待する殺菌効果が得られない可能性もあるため、照射方法も工夫する必要があります。

ここまで紫外線殺菌の概要から注意点など説明してきました。最後に、おすすめの紫外線殺菌システムをご紹介します。

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前述のように、紫外線殺菌の用途には食品パッケージの表面処理があり、高い殺菌効果を期待できます。以下の資料では、容器充填機械メーカーに今後求められる食品包装材の殺菌のポイントについて解説しているますので、紫外線(UV)による食品包装材の殺菌にご関心のある方はぜひご覧ください。

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