UV測定に関する商業文献の多くはエンドユーザーを対象としており、プロセスの監視、ベンチマーキング、UV硬化問題のトラブルシューティングなどの問題を扱っている。しかし、測定のもう一つの重要な対象は、照射プロセス仕様についてエンドユーザーと明確にコミュニケーションを取らなければならないUVケミストリーや装置のサプライヤーである。エンドユーザーはUV測定の変化に関心を持つが、サプライヤーは測定値の絶対値を伝えようとしている。この2部構成の記事は、実験室と生産ラインの間のギャップを埋める助けとなるよう努めるものである。この記事の パートI では、波長、ピーク照度、エネルギー密度(光量)の基本的なパラメータと、硬化プロセスにおけるそれらの役割について説明した。また、バンドパスフィルター、コサイン応答、ソラリゼーション(光劣化)、温度安定性など、強度測定の精度と再現性に関連する概念についても紹介した。最後に、包括的な硬化仕様書を書くためのガイドラインをいくつか紹介した。パートIIでは、エネルギー密度測定に関するいくつかの問題点、測定に対するランプ光学系の影響、校正について紹介し、最後に測定器の選択に関するいくつかの提案を行う。
塗料メーカーのための紫外線(UV)測定:パート2
ポール・ミルズ、UV Robotics, LLC, Cleveland, OH
エネルギー密度の測定と誤差の原因
エネルギー密度、すなわち「光量」の測定は、エネルギー密度の測定が照度の測定に直接関係する計算を含むため、照度と密接な関係がある。そのため、照度の測定に誤差があれば、光量計算にも必ず誤差が生じる。しかし、エネルギー密度には照度測定とは関係のない側面もある。
サンプリング数
一般的に、紫外線のエネルギー密度の測定は、いくつかの連続した照度測定を行い、それらを合計することによって得られる。この概念は、初等積分学でよく知られている基本的な考え方である。エネルギー密度とは、時間経過に伴う照度の曲線下の「面積」である。時間を細かくスライスすればするほど、総エネルギー密度の推定値はより良好になる。これはもちろん光量計のサンプリング数に比例する。多くのUV硬化プロセスが非常に高速で行われ、この事実に注意を払う必要があることを考慮すると、測定にはサンプリング数の重要性はより大きくなる。UV積分光量計が、固定ランプの下を移動するベルトコンベヤー上に置かれた場合を考えてみる。例えば、ランプが表1のようなプロファイルを持っているとする。この例では、ランプの有効照射幅が2.5インチ(63.5 mm)であるとする(高集光システムの場合は1インチ(25.4 mm)程度)。
ここで、さまざまなサンプリング数でどれだけのサンプルを測定できるか考えてみる。サンプリング数が25サンプル/秒と少ない場合、毎分10フィート(3 m/min)のコンベアでは31サンプルが収集されることになる。しかし、毎分200フィート(61 m/min)のコンベアでは、光量計が発光される「ウィンドウ」内にある間に1回しか測定できない。この測定値が役に立つ可能性は?この状況は、カメラでレーシングカーの近接写真を撮ろうとするのに似ている。1枚のスナップショットで多くを得ることは難しい。実際、車をフレームの中心に正確に収めることはおろか、まったく写っていないかもしれない。そのため、高速データ収集が必要なのだ。類似の例として、より速いラインスピードでは、モーター駆動によるより速いシャッタースピードが必要となる。光量計のなかには、毎秒2048またはそれ以上のサンプリング数を提供しているものがある。ライン速度が200fpm(61 m/min)の場合、この例で使用した2インチ(51mm)の短いウィンドウで120以上のデータが収集されることになる。このように高いサンプリング数で測定すると、真のピーク照度とエネルギー密度の両方を正確に把握することができる。曲線下のスライスは非常に細かく、正確な測定が可能となる。
サンプリング数の影響を受けるもう一つのアプリケーションは、キセノンUV光源のようなフラッシュランプの使用である。カメラのフラッシュバルブのような連続的なUV光源とは異なり、これらの光源は非常に強力であるが非常に短時間のUVバースト光を供給する。これらのランプは、1秒間に100~120回という非常に速いパルスを発することがある(図1)。このため測定には、非常に高速なデータ取得能力と、瞬間的な高エネルギーのピークを検出できる能力という2つの要求を満たす必要がある。従来の光量計では、このようなパルスランプの出力を大幅に過小評価する可能性があるため、これらの光源を測定するために特別に設計された測定器を用いる必要がある。
閾値
多くの測定装置には、データ収集を開始する閾値(トリガーポイント)がある。大量のデータを保存する必要がある積分光量計では、閾値を設定することで、実際の測定データ用にメモリを確保することができる。閾値はまた、窓からの外光、蛍光灯、または硬化プロセスの一部ではない反射光からの迷光UVを測定することを防止する。光量計の閾値レベルを理解し、その閾値がデータ収集に悪影響を及ぼすかどうかを判断することが重要となる(図3)。例えば、低照度プロセスでは、閾値を低く設定するか、適切な閾値を持つ測定器を選択する必要があるかもしれない。ラインスピードが非常に遅いプロセスや、閾値が異なる装置で測定された低照度アプリケーションでは、データに一貫性がなくなる。
正確さ、精度、校正
測定値を信頼するためには、ばらつきの原因だけでなく、何が起こりうるかを理解する必要がある。うまく設計された光量計は、同じ条件下で適切に使用されれば、高い精度、つまり再現性を持っている。しかし、これらの測定器の精度は、時間の経過や試験条件の変化によって変化する可能性がある。異なるメーカーの異なる光量計の測定値は、その構造や設計の品質によって大きく異なる。光学系の積層とバンドパスフィルターの選択によって、同じ光源でも異なる測定値が得られることはすでに述べた。時間の経過とともに、電子回路も光学部品も変化する。光学部品のソラリゼーションを加速させるような紫外線への継続的な暴露や非常に高強度の光源への暴露があると、変化はより拡大する可能性がある。相対的な測定やプロセスの変化に関心のあるエンドユーザーにとっては、再現性のある、あるいは精密な装置で十分かもしれないが、サプライヤーにとっては、より精度に注意を払う必要がある。多くの広帯域放射計が使用される広いダイナミックレンジにおいて、±10%の精度は非常に優れていると考えられる。測定器によっては、±5%というさらに高い精度を出すものもある。したがって、1.2W/cm2の測定値に対して、実際の放射照度は1.08~1.32Wである可能性がある。精度を保証するために、光量計は定期的に校正する必要があり、少なくとも年に1回実施すべきである。連続的または高出力の光源への暴露がある場合、または測定器への衝撃を疑うその他の理由がある場合はそれ以上行う必要がある。再校正の間は、適切なメンテナンス、温度制限の順守、光学面の手入れを行う。ほとんどの信頼できるサプライヤーは、NISTトレーサブルな校正光源に結びついた校正証明書をこのサービスと一緒に提供している。光量計を鉄ドープランプや395 nmのLEDなど特定の光源で日常的に使用している場合は、その情報を光量計のサプライヤーに伝え、同様のUV光源で校正することでさらに精度を高めることができる。
光量計の選択
これまでの議論で、光量計の使用に関する技術的な側面がいくつか指摘され、光学系、サンプリング数、閾値設定、温度安定性、装置の精度などの特徴が明らかになった。現在の技術では、現場で使用するための有益なリアルタイム表示と、後の分析のためのデータダウンロード機能が提供されている(図4)。しかし、実用上留意すべき点もいくつかある。
1. 顧客も使用する可能性の高い装置を使用すること。自社が抱えている研究者以外は誰もアクセスできない装置で硬化値を指定しても、ほとんど意味がない。ラボ用測定器の中には、ラボでの作業において魅力的な機能や精度を提供するものがあるかもしれないが、2回目の測定は、一般的な現場用ツールでおこなうことが顧客や技術サポートに感謝されるだろう。仕様、特にUV測定は測定器に大きく依存する。手ごろな価格で、頑丈で使いやすい光量計が工場では人気であり、これらの測定器での測定値を提供すべきである。補足として、UVを初めて使用する顧客には、どのような装置を使用すべきかについてのガイダンスが有用であり、またコミュニケーションを円滑にし、トラブルシューティングを容易にする。
2. アプリケーションに最も適したセンサーのタイプを検討する。コンベアベルト向け光量計は幅広い用途に適しているが、小型の測定器が必要な用途には大きすぎる場合があり、代わりにプローブ型センサーを使用することもある。
3. データの蓄積と報告 マルチチャンネル光量計(図5)は、単一チャンネル測定器よりも多くの情報を提供し、硬化不良やトラブルシューティングの立証に役立つ場合がある。測定を行い、記録保存のためにデータをレポートにエクスポートできることは良い手法であり、エラーを最小限に抑えることができる。一部の装置には強力なグラフィック・ソフトウェアが搭載されており、顧客が認識していない問題の分析に役立つ。現場では、より高度な分析のためのダウンロード機能だけでなく、シンプルな数値表示を提供する光量計は理想的な組み合わせである。モデルによっては、診断のためにライン上の各ランプのUV照度とエネルギー密度を表示できるものがあり、複数ランプシステム用によく設計されている。最近の通信構造と小型化の進歩により、複雑な3D部品に複数のセンサーを配置し、中央のデータ収集ユニットにデータを報告して記録できるような革新的なシステムが開発されている。
4. 優れた測定器であっても再校正とメンテナンスが必要であるため、サービスとサポートは重要である。この業界で深い知識と実績を持つサプライヤーと協力することである。
要約
もし数式が、再現不可能な道具を使って不確かな単位で表現されるとしたらどうだろう。「少量のモノマーに光重合開始剤を加えてしばらく混ぜる」だけでは、信頼できるコーティングはできない。この記事では、UV硬化を構成する波長、ピーク照度、エネルギー密度のパラメーターと、それらの測定に関連する一般的な問題を検討した。その目的は、サプライチェーン全体でプロセスについて議論し、実験室で行われたことを現場で再現し、必要に応じてトラブルシューティングを行う方法を提供するために使用できる言語を作成することである。そのためには、UV測定ツールの適切な選択、使用、メンテナンスが、UV硬化プロセスを文書化、伝達、再現する上で極めて重要である。
本記事の執筆にあたり、バージニア州スターリングにある EIT Instrument Markets社(現EIT2.0社) のジム・レイモント氏に多大なご協力をいただいた。ジムの連絡先はjraymont@eitinc.com(現在では jraymont@eit20.com )または電話703/478.0700。著者の連絡先:PMillsOH@aol.
*原文はPaul Mills氏ならびにEIT2.0社(旧EIT社) Director of SalesのJim Raymont氏の協力によって英文で作成され、最初にPaint & Coatings Industry magazine(2009年10月号)に掲載されました。
本資料は、EIT2.0社より、和訳許可および日本のお客様へのオリジナル資料の解釈を目的とした転載許可のもと、エクセリタスノーブルライトジャパン株式会社が和訳し要約したものです。
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